私は内科医として、日々多くの患者さまと向き合っています。
職業柄、発達や心理に関する知識はある程度身につけていました。
しかし、家庭内、特に自閉スペクトラム症(ASD)と診断された息子との関係については、医師としての知識だけではどうにもならない壁を感じていました。
そんな中、私が出会ったのが**ペアレント・トレーニング(ペアトレ)**でした。
このプログラムを通して、私は医師としてだけでなく、母親としての視点で、大切なことに気づくことができ、息子との関係も大きく改善されました。
■「伝わらない」もどかしさと日々の葛藤

息子は小さな頃から独特の感覚や強いこだわりがあり、同年代の子どもたちと比べても、コミュニケーションにおいて明らかな違いを感じていました。
診断がついたのは3歳の時でした。
「自閉スペクトラム症」という言葉を医師としては理解していたものの、いざ自分の子どもにあてはまると告げられると、やはり動揺し、すぐには受け入れることができませんでした。
成長するにつれ、息子のこだわりや気持ちの切り替えの難しさがより顕著になり、私たち家族の生活は常に緊張感を帯びるようになっていきました。
「何度言っても伝わらない」
「少し注意しただけで感情が爆発する」
そんな毎日の中で、私もつい感情的になって怒ってしまうことが増えていきました。
「内科医として患者に寄り添える自分が、なぜわが子とうまく関われないのか」
そんな自問自答を繰り返し、自信を失いかけていた時期もありました。
■ペアトレとの出会い――「親としての支援」の第一歩

そんな折、区の市民講座でペアトレと出会いました。
息子との関係がこれ以上悪化してはいけないという強い思いから、一歩を踏み出してペアトレを受けてみることにしました。
実際に参加してみると、ペアトレは「子どもの行動を理解し、親の関わり方を見直していく」ための、非常に実践的なプログラムでした。机上の理論ではなく、日常生活にすぐ活かせる具体的な方法ばかりで、毎回の学びがすぐに家庭の中で役立ちました。より深く系統だって学ぶために、日本ペアレントトレーニング子育て支援協会の講座を受講しました。
■最初の課題は「褒める」ことでした
私が最初に難しいと感じたのは、「褒める」という行為でした。
それまでの私は、息子の問題行動ばかりに目がいき、「当たり前にできていること」には目を向けていなかったことに気づかされました。
ペアトレでは、「すぐに」「具体的に」「行動を絞って」褒めることが大切だと繰り返し学びました。
たとえば、「今日はおもちゃを自分で片付けたね」「お風呂の時間にすぐ来てくれたね」など、小さな行動に注目して声をかけることを意識するようになりました。
そうすることで、息子の反応が明らかに変わっていきました。
褒められることが嬉しいようで、得意げな表情を見せたり、落ち着いた行動が少しずつ増えてきたりしました。
それと同時に、私自身も息子の良い面に目を向ける余裕が生まれ、毎日の関わり方が柔らかく、温かいものになっていったと感じています。

■パニックやこだわり行動への対応も変化しました
ペアトレを通して学んだもう一つの大きな気づきは、「困った行動の裏には理由がある」という視点でした。
以前の私は、息子が突然怒り出したりパニックになると、「なぜそんなことで?」と感じていました。
しかし、ペアトレでは「不安や混乱のサイン」としてその行動を捉え、事前の予告や視覚的な支援が大切であると学びました。
それ以来、予定変更がある場合にはあらかじめ伝えたり、予定表を一緒に確認するようにしたところ、息子の不安が減り、パニックになる頻度も大きく減少しました。
ある日、息子が自分から私の手をつないできたときには、思わず涙がこぼれそうになりました。
「ああ、やっと心がつながった」
そんな実感を得たのは、ペアトレを受けてからのことでした。
■ペアトレをもっと多くの家庭へ
私にとって、ペアレント・トレーニングは親子関係を大きく変える転機となりました。
しかし、現実にはこのような支援の存在自体を知らない保護者の方が多くいらっしゃいます。
医療機関や支援センターで一部導入されているものの、地域差や情報の偏りがあり、受けたくても受けられないご家庭がまだまだ多いと感じます。
また、ペアトレというと「親が悪いから指導される」といった誤解をされる方もいるようですが、私自身が体験してみて感じたのは、これは「親を責めるもの」ではなく、「親を支えるための仕組み」であるということでした。
私はこの経験を通して、「親が変われば子どもも変わる」という手応えを確かに感じました。
そして、それは私自身をとても勇気づけるものでした。

■今、悩んでいるお母さん·お父さんへ
もし今、お子さんの発達や行動に悩んでいるお母さん・お父さんがいたら、私は心からこう伝えたいと思います。
「どうか、一人で抱え込まないでください。ペアレント・トレーニングという有効な選択肢があります。」
子育てに正解はありません。
ですが、悩みや不安を共有し、行動につなげていける方法があることで、親としての自信を少しずつ取り戻すことができます。
私は内科医という立場でありながらも、子どもとの関係に悩み、苦しみ、時には涙を流してきました。
それでも、ペアトレという手段と出会い、学びを重ねる中で、息子と再びつながることができました。
そして今では、息子との毎日を楽しめるようになったと胸を張って言えます。
ペアトレは、決して特別な人だけのものではありません。
どんな保護者にも、必要な支援であり、親子の関係を築き直すための確かなツールです。
この素晴らしいプログラムが、もっと多くのご家庭に届くことを願ってやみません。
この記事を読んでいるあなたも、子どもの成長を見守り、親としても成長できる道を探してみませんか?
ご興味のある方はぜひ一度、無料体験会・個別相談会にご参加ください!
\ 無料動画講座プレゼント中♪ /

大谷
ペアレントトレーニング・プラクティショナー養成講座 4期生
内科医として、これまで13年間、総合内科や循環器内科の分野で診療及び研究に携わってきました。現在は外来を中心に、地域に根ざした医療を行っています。
総合内科専門医・循環器専門医・医学博士として、専門的な知識と経験を生かしながら、患者さん一人ひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。
一方で、自閉スペクトラム症のある子どもを育てる母親として、ペアレント・トレーニングを受け、親子関係の変化や支援の大切さを実感しました。医療と子育て支援をつなぐ取り組みにも関心を持っています。
京都府在住 (2児の母・医師)