「もっと頑張って」と言う前に。人のやる気を奪っていませんか?

明るい会議室で、男女4人の職員が意見を交わす様子。発言する人に耳を傾け、相手の考えを受け止める姿から、肯定的な注目や心理的安全性のあるチームづくりを表現したイメージ写真。

「何度言ったらわかるの?」

「どうして自分からやらないんだろう?」

「もう少し頑張ってくれたらいいのに……」

子育てでも、職場でも、そんなふうに感じたことはありませんか?

でも、ちょっと考えてみてほしいのです。

私たちは、相手にもっと頑張ってほしいと思いながら、知らず知らずのうちに、その人のやる気を削いでいることはないでしょうか。


私はペアレントトレーニングの講師として、保護者や支援者の方々に関わっています。また、企業や福祉事業所での職員研修、組織づくりに関わる機会も増えてきました。

そんな中で、最近ますます強く感じていることがあります。

それは、ペアレントトレーニングで大切にしている「肯定的な注目」は、子育てだけでなく、大人同士の人間関係やチームづくりにも必要だということです。

目次

発言しないのは、本当にやる気がないから?

研修では、参加者同士で意見を出し合うグループワークを取り入れています。

同じような内容の研修でも、チームによって話し合いの雰囲気が大きく違うことがあります。

誰かが話すと、うなずく人がいる。

「なるほど!」

「そういう考え方もありますね」

と反応が返ってくる。

すると、別の人も自分の考えを話し始め、自然と会話が広がっていきます。


一方で、誰かが発言しても反応が少なく、会話がなかなか続かない場面もあります。

もちろん、発言が少ないからといって、やる気がないとは限りません。

じっくり考える人もいれば、人前で話すことが苦手な人もいます。


ただ、いろいろな場所で実際に研修を重ねる中で、私はこう感じるようになりました。

「もっと積極的に発言してほしい」と求める前に、安心して発言できる環境があるかを考える必要があるのではないか。

ここで大切になるのが、「心理的安全性」という考え方です。

心理的安全性とは、質問したり、異なる意見を伝えたり、失敗を共有したりしても、否定されたり責められたりすることを過度に恐れず、安心して発言できる状態のこと。

何を言っても許される、誰も注意されないという意味ではありません。

意見が違っても、互いを尊重しながら話し合えること。

わからないことを「わからない」と言えること。

困ったときに「助けてほしい」と言えること。


そんな安心感があってこそ、人は自分の考えを表現しやすくなるのだと思います。

そしてこれは、職場だけの話ではありません。

家庭でも、学校でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

反応がない。感謝もない。それでも頑張り続けられますか?

誰かのために時間を使って準備をする。

相手にとって少しでも良いものになるように、考え、工夫し、行動する。

そんなとき、相手から何の反応もなかったら、どう感じるでしょうか。

「ありがとう」
「助かりました」
「いいですね!」

ほんの一言でも返ってくると嬉しいものです。


反対に、何の反応もないことが続くと、不安になり、だんだんやる気が削がれてしまいます。

それどころか、

「この人のために、もうひと頑張りしたい」

そんな気持ちまで小さくなってしまうことがあります。


以前、ある書類を確認してもらったとき、「問題ないと思います」と返ってきたことがありました。

もちろん、何も問題がないのは良いことです。

でも、そのとき私は心の中で、「いや、問題あるものを作ったつもりはないんだけどな(笑)」なんて思ってしまいました。


もしそこで、

「バッチリですね!」
「準備ありがとうございます!」

そんな言葉が添えられていたら、受け取る印象はきっと違っていたと思います。

たった一言。

でも、その一言があるかないかで、相手との関係性や、次に向かう気持ちが変わることもあるのです。

もちろん、反応が少ないからといって、相手が感謝していないとは限りません。

言葉にするのが苦手な人もいれば、行動で示してくれている人もいます。

私自身、相手の言葉ばかりを気にしていたときには見えなかった、その人なりの協力や気遣いに、後から気づいた経験もあります。

だからこそ大切なのは、相手をよく観察すること。

そして、気づいたことを、できるだけ言葉にして伝えることです。

家庭も職場も、一つのチーム

例えば、職場では、

「何で報告してくれなかったの?」
「もっと自分で考えて動いてほしい」

家庭では、

「何で早く言わなかったの?」
「言われる前にやってよ!」

こんな言葉が飛び交うことがあります。

どちらも、相手にもっとよくなってほしいという思いから出ているのかもしれません。


でも、言われる側はどうでしょう。

何かをしても気づいてもらえず、できなかったことばかり指摘される。

失敗したら叱られる。

そんな経験が続けば、次の行動に慎重になったり、自分から動くことをためらったりするかもしれません。


ここで思い出したいのが、ペアレントトレーニングで大切にしている「肯定的な注目」です。

肯定的な注目とは、相手の望ましい行動や、すでにできていることに目を向け、それを具体的に伝える関わり方です。

ただ「すごいね!」と褒めることだけではありません。

「準備してくれて助かったよ」
「さっきの意見、参考になったよ」
「自分から片づけてくれたんだね」

そんなふうに、相手の行動をよく見て、言葉にすること。


大人になると、できていることは当たり前になり、できていないことばかりが目につきやすくなるのかもしれません。

でも、当たり前に見えることほど、誰かの努力や気遣いに支えられているのではないでしょうか。

家庭も職場も、誰か一人の頑張りだけで成り立つものではありません。

だからこそ、互いの行動に目を向け、認め合うことが大切です。

「明日もここに来たい」と思える場所を

組織づくりというと、仕組みやルール、目標管理などを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、それらも大切です。

でも、私はそれと同じくらい、日々の小さな関わりが大切だと思っています。


・自分の意見を聞いてもらえる
・していることに気づいてもらえる
・困ったときに相談できる


そんな場所なら、「また明日も頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。

家庭なら、「今日もこの家に帰ってきたい」と思える場所。

職場なら、「明日もここで働きたい」と思える場所。

子どもにも、大人にも、そんな安心できる居場所があってほしい。


そして、これは私自身への問いかけでもあります。

講師として、代表として、母として。

私は周りの人たちがしてくれていることに、ちゃんと気づけているだろうか。

感謝を感じるだけでなく、伝えられているだろうか。

自分が求める反応ばかりに目を向けて、相手なりの頑張りを見落としていないだろうか。


人を変えようとする前に、その人が安心して力を発揮できる環境をつくれているだろうか。

ペアレントトレーニングは、単に子どもを褒める方法を学ぶものではありません。

人の行動を観察し、環境を見直し、関わり方を変えていく学びです。

だからこそ私は、この学びは子育てだけでなく、組織づくりやチームづくりにも生かせると感じています。


子どもは変えなくていい。

まずは、私たちの見方や関わり方から。

今日、あなたの周りにいる誰かの「すでにできていること」を、一つ見つけてみませんか。



一般社団法人 日本ペアレントトレーニング子育て支援協会では、保護者や支援者を対象に、ペアレントトレーニングの資格認定講座や研修を行っています。

家庭での子育てはもちろん、教育・福祉現場での支援やチームづくりにも生かせる学びをお届けしています。

ペアレントトレーニングに関心のある方は、ぜひ当協会の講座や活動もご覧ください。

ペアレントトレーニングは、子育てだけのものじゃない。

ペアレントトレーニングを学ぶと、子どもへの関わり方だけでなく、大人同士の人間関係にも新しい視点が生まれます。

当協会では、保護者の方も、支援者の方も、一緒に学んでいます。

現在、11月開講の「ペアレントトレーニング支援士養成講座」第12期生を募集中です。

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